4月の街は、桜の淡いピンクから一気に瑞々しい新緑へと塗り替えられていきます。けれど、そんな中でふと視線を向けると、春なのに、秋かと見まがうような「赤」が目に飛び込んでくることがあります。
秋の紅葉(こうよう)とは違う、春にだけ現れる特別な「紅い葉」。4つの植物たちをご紹介します。
①垣根を彩る、燃えるようなカナメモチ
公園の生垣や庭先で、今一番主張しているのがカナメモチ(要黐)ではないでしょうか。
古い葉は深い緑色をしているのに、新芽だけが驚くほど鮮やかな赤色をしています。そのコントラストは、まるでお能の装束の襲(かさね)を見ているかのよう。近づくと小さな蕾がたくさんついていて、これから白い花を咲かせる準備に余念がないことがわかります。

②産毛に包まれた日焼け止め、アカメガシワ
空き地や道端で、少し手のひらのような形をした赤い葉を見つけたら、それはアカメガシワ(赤芽柏)かもしれません。
この赤色の正体は、実は「日焼け止め」。まだ柔らかい新芽を強い紫外線から守るために、赤い色素(アントシアニン)と細かな産毛で身を包んでいるのです。大人(成葉)になるにつれて緑色に変わっていくその姿に、植物の健気な生存戦略を感じます。

③足元から突き出す生命力、イタドリ
ふと足元に目を向けると、アスファルトの隙間からでも力強く顔を出しているのがイタドリ(虎杖)です。

独特の赤紫色の斑紋を纏った新芽は、春の野山の代名詞。その逞しさを見ていると、旬の食材であるアサリや春キャベツのパスタを食べて、私たちも生命力を分けてもらいたくなりますね。
④楠(クスノキ)の「春の落葉」
そして、この時期の赤といえば、忘れてはならないのがクスノキです。

クスノキは常緑樹ですが、春に新しい芽が出るタイミングで、役目を終えた古い葉が赤く染まって落ちていきます。新緑の美しさの中に、ハラハラと舞い落ちる赤い葉。それは「循環」を止めない植物の、潔いバトンタッチの儀式のようにも見えます。

この写真は秋ではなく、3月下旬の日比谷公園のクスノキの下です。常緑でも循環していることが分かりますね。
観察の終わりに
これらの赤は、東京の公園や街路樹でも、同じように私たちを待っています。
常緑樹は「葉が落ちない木」ではなく、「一度に落とさない木」なのだと気づかされます。
「春なのになぜ赤いの?」
そんな問いを胸に歩いてみると、ただの散歩道が、一気に奥行きのある物語へと変わります。
皆さんもお散歩の途中に、この「期間限定の赤」を探してみませんか。
同じ「赤」でも、飾るための赤、守るための赤、広がるための赤、そして手放すための赤があることがわかります。
