年末年始に、宮城旅行に行ってきました。
そこで出会った植物レポートをしたいと思います。
土地の時間は、植物の年齢に刻まれている
宮城で植物を見ていると、「何が植えられているか」よりも、「いつからそこにあるのか」が気になってくる。震災を経た土地では、風景は一度途切れ、その後にあらためて植えられた植物と、時間を越えて残った植物が並んで存在している。その差は、植物の年齢となって、はっきりと目に見える。
今回訪れたのは、閖上、瑞鳳殿、塩竈神社、松島、瑞巌寺、円通寺、日和山。それぞれの場所で、異なる時間を背負った植物に出会った。
サクラ|若い木が示す「これから」の時間
宮城では、いくつもの桜に出会った。閖上桜、彼岸桜、四季桜、塩釜桜、日和山の桜。中でも、閖上桜は、震災後に植えられたものだと推察される。
幹はまだ細く、枝ぶりも控えめだが、その若さは欠落ではなく、時間の途中にあることの証でもある。桜はしばしば「希望の象徴」と言われるが、それは満開の姿よりも、これから何十年も季節を重ねていく前提を持つ木だからなのだと感じた。


閖上の富主姫神社は小高い丘の上にある。でもここでも津波の影響はあったようだ。震災の翌年に植えられた桜があった。私は梅が好きだが、でも地元の桜が咲くと、それだけで救われる心があるんじゃないかと思える。塩釜の日和山も、そこで破壊的な津波を見下ろしていた人々も、サクラが咲くだけで暗い光景が少しでも明るくなるのではないかと思う。
ユリアゲサクラを目にしたからか、その後桜が目に入った。
1枚目 瑞鳳寺の茶室横にあるヒガンサクラ、 2枚目 塩釜神社のシキザクラ、3枚目 シオガマサクラ、4枚目 コブクサクラ、5枚目は石巻の日和山のサクラ 眼下に広がるのがサクラです。





さざなみや 志賀の都は あれにしを
むかしながらの 山桜かな 平忠度
時がくれば変わることなくさく花に対して、人間の営みの儚さをうたった一首。人間が作ったものを飲み込んだのも自然、そのそばで平然と咲く花も自然。残酷で美しく平等で公平な自然。
寺院で見た椿たち|時間を越えてきた存在
一方で、寺院では椿が目に留まった。瑞鳳殿では椿の侘助、瑞鳳寺では椿、瑞巌寺でも椿が静かに咲いていた。





椿は毎年同じように咲き、同じように散る。その反復を長く続けてきた木々は、震災という大きな出来事の前後を越えて、ここに在り続けている存在でもある。若い桜と対照的に、椿は「すでに重ねてきた時間」をそのまま立ち姿に宿していた。
門松を見る|年の境目に立つ植物
瑞鳳殿や塩竈神社では、門松も見受けられた。門松は植えられた植物ではなく、年の境目にだけ現れる植物の姿だ。
1枚目は仙台の門松らしく、根白石村から材料が献上され門のような形。2枚目は鹽竈神社で見られた。なじみがある門松。3枚目は瑞巌寺で、門松というのか、ホテルにも同じような飾りがあった。わらが数本編みこまれていて、そこにめざしや昆布が刺してある。ゴボウ締めと言われる種類で細く長く続くようにという祈りが込められているそう。



正月飾りは、一定の期間だけ立てられ飾られ、役目を終える。そこには永続性はないが、「区切り」を可視化する力がある。震災後の土地で門松を見ると、時間がきちんと更新され続けていることを、植物を通して確認しているような感覚になる。
松島・瑞巌寺で気になった植物たち
瑞巌寺では、臥龍梅が印象的だった。うねるような枝ぶりは、長い時間が生み出す形そのものだ。キャラボク、ビャクシンといった常緑樹も、この土地の時間を静かに支えている。円通寺ではバラ園があった。それは中央から離れ、こっそり海外の文化を取り入れていた名残のようだ。



最後に
2011年、私は九州の大学の教授室で東北大地震のニュースをテレビで見たのを思い出す。東北に親族も知り合いもいないバカな女子大生は、その映像がCGみたいだとどこか他人事だった。教授の家族が東京だったため、そこでハッと我に返り、誰かの大切な人がそこにいることを実感する。そこから十数年を経て、新しい命を育み、我が子とその場所に立った。もちろん復興は進んでいて、瓦礫があるわけではない。でも妙に新しくきれいな街と、その片隅にあるあの日を忘れないためのモニュメント。平家物語を読み終わった直後だったからかもしれないが、万物は流転する・諸行無常・ゆく河の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず という言葉を思い出した。「今」生きていること、お腹空いていないこと・食べるものの心配をしなくていいことを大切にしつつ、その変わりゆく中で、少なくとも1000年以上、心を癒してくれた植物に対して、何よりも希望を感じる。
だから、私はこのブログを立ち上げ、続けていくんだと思う。津波を止めてくれるわけではない、私の悩みを解決してくれるわけでもない、でも必ず人間のそばにある植物に気づくだけでふんわりなにかを変えてくれる。


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