——咲く前、早すぎる、寒すぎる
年間の植物スケジュールでは、2月といえば梅と沈丁花を書いた。
白や紅の花がほころび、香りが先に春を連れてくる。そのことに異論はない。
それでも、2月を歩いていると、それには載らない植物たちが、どうしても気になってしまう。
咲くにはまだ早いもの、咲くには早すぎるもの、寒さを無視するように咲いているもの。
今年の2月は、そういう植物を探してみたいと思っている。
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(例)探してみよう!植物観察年間スケジュール 初めの一歩 – 日本の植物
馬酔木(アセビ)|まだ咲かないものを見る
2月の馬酔木は、花を見せない。
正確に言えば、見せる気がない。葉の陰に、房状の蕾を下げたまま、こちらの視線を受け流している。
近づいてよく見ると、その蕾はすでに整っていて、咲く準備だけは万端のようにも見える。
だが、今は咲かない。理由も告げない。
馬が食べると酔ったようになるから馬酔木、という名を知ってから、この植物は少し厄介になった。
毒があるからではなく、名前を知ってしまった植物は、もう無関心ではいられないからだ。

3月になれば、白い小さな壺形の花が連なって咲く。
それを知っている今、2月の蕾は、未来を抱えたまま沈黙しているように見える。

早咲きの桜|早すぎるものに戸惑う
2月に桜を見ると、頭の中で何かが一拍遅れる。
桜はもう少し先のはずだ、という感覚が、身体に染みついているからだろう。
河津桜や寒緋桜は、その感覚を気に留めない。
まだ空気が冷たく、コートを着た人が行き交う中で、濃いピンクの花をつけている。


それを見て、すぐに足を止めるほどの余裕はない。
桜なのに、今なのか、という違和感だけが残る。
それでも、そのまま忘れることはできず、通り過ぎたあとで振り返ってしまう。
2月の桜は、春の始まりを告げるというより、
こちらの季節感が、すでに一つではなくなったことを知らせてくる。
マンサク|寒いのに咲くものを見る
マンサクは、なぜこの時期に咲くのか。
考えても、納得のいく答えはすぐには出てこない。

黄色い細い花びらは、華やかでも可憐でもなく、ただそこにある。
冬の名残の中で、春を主張するでもなく、淡々と咲いている。
寒いのに、という言葉は、人の側の都合なのかもしれない。
マンサクにとっては、この時期が適切なのだろう。
2月にこの花を見つけると、季節が一直線ではないことを、説明なしに理解させられる。
2月に「探す」ということ
梅と沈丁花が、2月の正解だとするなら、
ここに挙げた植物たちは、正解ではないかもしれない。
けれど、咲く前の馬酔木、早すぎる桜、寒中のマンサクに目が留まるのは、
季節を消費するのではなく、確かめるように見ている証拠だと思う。
立ち止まらなくてもいい。
通り過ぎてもいい。それでも、同じ日に振り返ってしまうなら、それはもう十分に「探している」。
世界は変わらない。
2月の植物も、毎年そこにある。ただ、その中に引っかかるものが増えていく。
あと何度2月を過ごせるのだろうか。少なくとも数十回という単位でしかない。
だから、この時期だけ見られる植物を楽しみたい。
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