冬が本格的に動き出す12月、光の角度も空気の密度もゆっくりと変わり、植物の姿も静かな深みを帯びてきます。今回はサザンカの系統の中でも人気のあるオトメサザンカとオトメツバキ、秋の入口で咲き始める椿の早咲き品種、そして季節の“準備そのもの”を物語る**冬芽(モクレン・ホオノキなど)**を取り上げます。
オトメサザンカ|オトメツバキ
サザンカは晩秋から冬にかけて長く咲くため、12月の庭で最も頼りになる花木のひとつです。その中でもオトメサザンカは淡い桃色の花色が柔らかく、寒気の中にほのかな温度を添えてくれます。花弁は椿より軽く散りやすく、地面に広がる淡紅の落花は冬景色を優しく彩ります。

もしかするとあまり見かけない品種かと思います。滋賀県の石山寺で初めて出会いました。
12月下旬には満開です。
オトメツバキもございます。
オトメツバキの方が良く見かけるかもしれません。比べていただけると分かりますが、葉の大きさが全く違います。
同じ時期にお目見えするので、葉の大きさ・散り方(椿は花ごと落ちます)で確認しましょう。

アキイチバン|ツバキ
椿は一般に1〜3月の花ですが、品種によっては11月から咲き始めるものもあります。
椿は日本文化と深く結びつく木のため、和歌でもその名は頻繁に登場しますが、12月という“端境期”ではその存在感がほどよく控えめで、むしろ季節の前進を象徴するように見えてきます。

皇居の東御苑で観察し、2024年12月上旬には落ち始めていました。
■ 冬芽(モクレン・ホオノキなど)|「来春の設計図」がもう見えている
冬芽は、寒さの中で硬く閉じながらも、すでに春の構造が詰まった“植物のタイムカプセル”です。特にモクレンやホオノキは芽鱗に包まれたフォルムが美しく、毛に覆われた姿は冬の光を柔らかく反射します。じっとしているように見えて、内部では次の季節へ向けた準備が粛々と進んでいます。
モクレン
1枚目はシモクレン・2・3枚目はハクモクレンの冬芽です。なんとかわいいのでしょう。
1枚目は失念したのですが、2・3枚目は新宿御苑にて撮影しました。冬の澄んだ空とのコントラストが美しいですね。

春になるとこんなに豪華な白い花を咲かせ、面白い形の実をつけるのです。

ホオノキ
一番好きな冬芽かもしれません。深い紫色で、凍える空気の中、ツンと上を向いている姿。
美しくも凛々しい。

さて、ホオノキがどんなものだったか忘れて人はこちらの記事をご覧ください。
大きなはっぱと大きな白い花のあのホオノキです。この冬芽を想像できましたか。
その他の冬芽
ハナミズキの冬芽、赤いのはおそらくトチノキの冬芽。。。
色々ありますよ~♡

アブラチャン。カワイイ。

■ おわりに|12月は「冷たい空気の中に未来がある」季節
オトメサザンカ・オトメツバキの淡い色、秋一番の椿の前向きな気配、そして冬芽の沈黙。12月は一見“動きの少ない月”に思われますが、実際には、来年に向けた変化や兆しが最もくっきり現れるタイミングでもあります。写真を撮るにも観察するにも、冬の入口は驚くほど豊かな時間です。
葉・花・実をつけていない幹と枝だけだと思っていた樹木に冬芽という新たな視点が追加され、もし、その気になる冬芽が身近にあるのなら、その日から葉・花・実に会えるチケットを手に入れるわけです。
今年の12月、あなたはどんな植物の“前触れ”に出会いたいですか?


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