1月は植物の動きが少ないように見えるものの、実際には「次の季節へ向けた準備」が最もよく現れる時期です。松やロウバイの香り、ふくらみ始めた梅の蕾、冬に咲く寒ボタン、そして街路樹プラタナスの落ちた実。静かな冬の風景の中にある“兆し”に気づくと、季節の観察が一段深まります。
1. 門松と松 ― 新年を迎える象徴として
松は常緑であることから「永続」「常盤」を象徴し、古くから歳神を迎える依代として門松が作られてきました。新年の風景で最も目にする植物であり、1月の観察としては外せない存在です。
以下は25年1月の熊本県の阿蘇神社の門松です。

ゴヨウマツとアカマツかクロマツ。

鎌倉の建長寺の庭でもかれた芝生の上に緑の松が映えます。

源氏物語の松についての記事はこちら。
3. ロウバイ ― 冬に香る「三大香木」のひとつ
ロウバイは1月に咲く代表的な冬の花で、甘く澄んだ香りが特徴です。ジンチョウゲ、クチナシと並んで「三大香木」と呼ばれ、冬の香りを楽しめる貴重な植物として親しまれてきました。花の少ない冬に香りで季節を感じられる点が魅力で、透明感のある花の姿も魅力的です。

歩いていてふと香るロウバイに顔を上げさせれ、ついでに美しい黄色の花と青空を見れた日には幸せ以外の何ものでもありません。ロウバイとの思い出は、三十三間堂。花の名前も何も知らない大学生のころ、このいい香りの花なんだろうと友人と話していたら、隣の素敵な学ぶが「ロウバイだと思いますよ」と一言。私の中で強烈に残っている思い出のシーンです。
4. 梅の蕾 ― もっとも早く春を知らせる変化
梅は開花こそ2月以降が中心ですが、1月に観察すべきは“蕾の変化”です。枝先の丸みが増し、先端に薄い紅色や白の気配が見え始めるタイミングは、冬から春への移行を実感しやすい瞬間です。
以下はそれぞれ年も場所も違うのですが、撮り溜めていたもう少しで咲くか咲かないかの梅の蕾。
1枚目は一部咲いていますね。3枚目は枝がほんのり赤く染まっているのが分かるでしょうか。この絶妙な色合いに心つかまれます。

5. 寒ボタン(上野) ― 冬に咲く華やかな牡丹
上野東照宮ぼたん苑では、藁囲いの中で咲く寒ボタンを鑑賞できます。冬に牡丹を美しく咲かせるための管理が施され、他の季節とは異なる表情を見ることができる数少ない場所です。

6. プラタナスの落ちた実 ― 都市の冬景色の一部として
街路樹としてよく植えられているプラタナス(スズカケノキ)は、冬に丸い実が落ち、足元に独特の冬景色を作ります。葉のない枝に残る実、地面に転がる実、並木のシルエットなど、冬の都市景観を撮る際にちょうど良い被写体です。歩きながら気軽に観察でき、子供も興味津々な植物の一つです。

割れるとふわふわですが、かなり固いので石や靴で思いっきりつぶさないと割れません。
因みに上記の1枚目は日比谷公園、以下は新宿御苑です。雰囲気が似た写真になりますね。同じ場所みたい。

7. おわりに ― 静かな季節の中にある“予兆”を見る
冬は植物の活動が停滞しているというイメージがありますが、観察を続けてみると春へ向けた準備が随所に見えてきます。1月ならではの植物を記録しておくことで、季節の移り変わりをより立体的に楽しめるはずです。


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